泉水 陶根付展「漫筆・年中行事手帖」

2018年4月21日(土)~29日(日) / 休廊23日(月)

13:00〜19:00(最終日〜18:00)



泉水は、小さくて愛らしいのもの、豊かな世界を陶根付中心に探究している陶作家です。
ここ数年は、江戸をテーマに掘り下げ自身の作品世界との融合に取り組んでいます。
今年は江戸と現代の年中行事をテーマに、根付作品中心に15点ほどの作品を展示いたします。

日々過ごす中、日本でも行事がたくさん散りばめられています。江戸から続き今に残る歴史のある行事、近年定着してきたイベントともいえる行事。楽しみの中にも意味や歴史があることは、とても興味深く、泉水はそれを擬人化した動物が楽しむ様子を作品にしています。楽しみながら、一年をめぐるような展示になります。

泉水の擬人化された動物は「らしさ」を損なっていません。泉水自身は顔のデフォルメはしたくないという気持ちが強いそうです。しかし、擬人化されながらも動物の愛らしさも表現されているところが魅力のひとつです。泉水の動物に対する優しさ、愛情を強く感じます。

また、今年は2年ほど前から取り組んでいる「陶像」作品も見どころのひとつと私たちは感じています。今回は兎に挑戦していますが、根付ではない像の絶妙な大きさに加え、泉水が作り出す兎の柔らかさと、兎らしさが感じられるとても愛らしい作品となっています。ぜひ、根津まで御高覧くださいますよう、ご案内申し上げます。


「作家の言葉」 泉水

今回のテーマは以前から気になっていた古来のイベントです。
古いものに関して言えば、稲作が始まったと同時くらいから行われていたものもあると思います。
スペースや制作時間の関係からピックアップできる行事も限られていましたので、
年中行事に思うところを少しお話したいと思います。

「年中行事」「祭」は古くは稲作をはじめとする農作物の豊作祈願、
季節毎の自然災害を避けるべく神への祈り、
そして、実りの恩恵への感謝と奉納が起源でしょうか。
科学的発想がなく、自然と対峙していた時代に季節毎の神(=自然)への祈りの行事は、
生活そのものであり、切実な事であっただろうと思います。
時代を経て作物の貯蓄や余剰が生まれ、そういった行事は切実なものから、
生活のメリハリを生む、一年を時節毎に楽しむものへと変わっていったのではないかと考えます。
年中行事のあり方はその様に変化しながら、失われたものもあるでしょう。
多くのことが神頼みでは無くなってきた現代においても、
一年を通じ、形骸化されてなお残っている祭、形を変えたもの、
別の文化から取り入れられ根付いたもの、とたくさんの行事が行われています。
生活の不安を取り除くため、必然として行われていた行事は
科学によって得られた一定の安定のもとに、失われるのではなく、
楽しみや、精神の豊かさを求める行事として形を変えながらも存続し、
あわよくば他国の文化までも楽しもうという姿勢がとても面白く、興味深いと思うのです。
不安のない生活を願いながら、季節の恩恵に与る、そして楽しむ、という年中行事の立ち位置は、
昔も今も変わらないのです。