道甫根付個展

ご挨拶

このたび、Gallery花影抄では、道甫さんの根付彫刻連作の発表を軸にした展覧会を開催させていただく運びとなりました。
この連作は、中国で現代根付をコレクションしてくださっている翟春晖氏からの「一つの物語で構成された連作を作り展覧会を開催してほしい」という御依頼を受けて制作したものです。
道甫にとっても長い期間をかけた連作をまとめあげるのは初めてのことで大きな挑戦となりました。
貴重な機会をくださった翟春晖氏にあらためて御礼を申し上げます。

連作には2019年から取り組んでいましたが、新型コロナウイルスの影響で、お披露目の展示をする機会が長く延期となり、今回の展示期間となりました。
未だ世界との行き来がままならない状況で、日本が好きな翟さんにも来日していただくことができません。
そのような経緯から、今回は中国語のページも作りました。
できる限り多くの方にご覧いただけることを願っています。

会場では、翟春晖氏コレクションとなる連作とは別に、関連した世界観の新作根付の展示販売も同時に行います。
こちらもよろしくお願い申し上げます。

Gallery花影抄 橋本達士


作家ご挨拶

今は昔、道甫といふものありけり。家にこもりて材とたはぶれ、根付を作りけり。
(昔々、道甫という人がいた。家に籠って材料と遊び戯れ、根付をつくったそうな。)
そういう暮らしをしていると、コレクターの方から自分のコレクションのために連作の根付を制作して発表してほしいという依頼が舞い込んだ。
小説の問題提起みたいなものでそこから始まった。

今回の展覧会のテーマは「物語」。
昔話「浦島太郎」を道甫的解釈で再構成したもの。

浦島太郎という因果応報異郷訪問譚にクトゥルフ神話成分を一匙、そして作者の視点をミックスして紡いだものが、この連作「浦島インスマス太郎はクトゥルフの夢を見るか?」。

このようなかたちで、この連作を発表する貴重な機会をいただきましたこと、依頼主である翟春晖氏に深く感謝いたします。

展覧会では、新作という外伝も追加して発表致します。
皆様に楽しんでいただけましたら幸いです。

道甫

道甫的解釈浦島太郎

推薦状

Gallery花影抄の橋本さんのご紹介で、私は3年前に東京で初めて道甫さんとお会いしました。そのときに感じたのは、道甫さんは優しく気さくで、あまり口数は多くないけれど、内に秘めた才能を持っている人だということでした。彼の作品は非常に独創的で、人の想像を超えるような自由さがありました。まだ若いですが、優れた根付作品を数多く生み出し、素晴らしい根付アーティストになられました。

その後橋本さんにお力添えいただいたお陰で、道甫さんと私は根付に対する熱意や追求したい気持ちを共有することができました。そこで、現代根付をテーマにした展覧会をシリーズで開催することになりました。中国では「万事开头难(何事も始めが一番難しいものだ)」ということわざがあります。道甫さんは若くて非常に勇気があり、このシリーズ展覧会の一弾目という重荷を背負ってくださいました。今後も、より多くの優秀な根付作家にご参加いただけることを期待しております。ともに根付の発展に貢献することができましたら幸いです。

道甫さんの現代根付創作展覧会のご成功をお祈りいたします。

翟 春晖(Zhai Chunhui)
2021.4.30