ご挨拶

このたび、4年ぶりに森謙次さんの個展を開催する運びとなりました。
今回は、謙次さんの愛する大切な素材である珊瑚をメインにした根付たちが並びます。
桃色の艶やかな素材の魅力と、謙次さんのあたたかくユーモアのある作風で、鑑賞される皆様のひとときが楽しく微笑みのある時間となることを願っています。

このたびの感染症による社会状況が、いまだ予断を許さぬ状況であることをふまえ、ご来場は予約のお願いをすることになり、ご不便をおかけいたします。
ご理解をいただけますことをお願い申し上げます。

新作発表と作家による珊瑚の制作風景の動画をこの特設サイトで公開いたします。
一人でも多くの皆様にお楽しみいただけましたら、作家共々幸いに存じます。

Gallery花影抄 橋本達士

天狗のべく杯/森謙次

作家ご挨拶

桃源郷という言葉から僕がまず想像するのは、"穏やかな陽気の中、童子を伴いロバに乗って山の中の庵へ行き、楽しく呑み食いする"です。
そういう想像の世界をささやかながら具現化する為に根付を制作していて、尚且つ桃源郷の中にある桃は、僕にとっては珊瑚を思い起こさせるものなのです。
今回の個展では、僕が根付の素材として最も好きな宝石珊瑚を中心に作品を作っています。

僕の工芸(彫刻)の出発点は、奈良芸術短期大学を卒業して奈良一刀彫り工房に入った所からです。
奈良一刀彫り工房で5年修行させてもらったのですが、5年経った日ぐらいに父が、「息子がお世話になっていますので挨拶に来ました」と師匠の元へやって来ました。 師匠と父が話をして帰った後、師匠が「森は奈良一刀彫りをやるより好きなように彫るのが向いているから実家に帰りなさい」と仰ったのですが、畏れ多くも「僕は第二の森川杜園になりたいです!」と言うと、即座に「森には無理や!」と言われました。
自分でも薄々思っていたのですが、奈良一刀彫りに対する愛が足りなかったです。
師匠曰く、「お父さんは直接は言わなかったが帰って継いでもらいたいと思っているはずだから、高知へ帰りなさい」と諭されて、高知へと帰りました。

それから20年近く経ち、好きな根付を制作しつつ、家業である珊瑚加工を今でもできているのは、本当に幸運だとしみじみ感じています。
師匠、ありがとうございます!
まだまだ頑張っていかなければならないですが、根付&珊瑚がすき!という思いを詰め込んだ個展だと思っています!
よろしくお願いします️。

森 謙次