森 謙次についてprofile

森謙次は家業である珊瑚職人の家に生まれ、珊瑚という美しく特別な素材に親しんで育ちました。 その影響からか、さまざまな素材への好奇心が旺盛で、扱い方に面白さがあります。

趣味のひとつが古書店巡り。無類の本好きで資料の本を山ほど蒐集しています。 買い集めた古書(絵手本や浮世絵など)の中から引っ張ってきたクラシックな題材と、コミカルで現代的に表現したもの、その二面が主な作風ですが、とどのつまりはキャラクター表現の追求なのだろうと思います。
それを天然素材で根付として彫刻する。本格的な印象と、ポップで可愛らしい印象、重さと軽さを併せ持った作風です。

掌の上で転がして、どこか憎めない、つい頬が緩んでしまう、そういう愛嬌が大きな魅力だろうと思います。 二児の父親になっても、どこか本人も童心を宿したままで居て作品にも滲み出る、愛される理由がそこにあると思います。
その大事な童心の在り場所こそが、森さんの胸の内にある桃源郷なのかもしれません。

Gallery花影抄 橋本達士

森 謙次(もり けんじ)

作家の言葉と制作動画Interview & Movie

高知は世界有数の宝石珊瑚の産地として栄えてきた土地で、僕自身、珊瑚職人の家に生まれたので、幼い頃から珊瑚は身近にあるものでした。
両親は共働きで母は看護師、父が珊瑚職人だったので、必然的に家で仕事をしている父の工房によく出入りしていたのですが、作業台の上に並べられた薄いピンク色の珊瑚の薔薇を見ては「ケーキのデコレーションの小さい薔薇みたいで可愛いくて美味しそう」と手にとって眺めていたのを覚えています。
その影響なのでしょう、小さく可愛い作品が好き!なまま成長し、根付&珊瑚作家として現在に至っているのですが、父の跡を継ぎ珊瑚を扱うようになってから赤、桃、白の色のバリエーション、優しくも深い色に惹かれ、「珊瑚職人の家に生まれて良かった」と感慨に浸りながらの制作の日々です。
まだまた道半ばですが、少しでも宝石珊瑚の良さを伝え広められるよう頑張ります! 

宝石珊瑚(※1)は人の小指の大きさに育つのに約120年かかるので、いつも加工する前に珊瑚を見ながらできるだけ無駄な箇所を出さないように図案を慎重に考え制作しています。
それでもやはり天然の物なので削っている途中で思わぬ所に空洞があったりヒビが出てきたりする事もありますが、そういうのも含めて制作する面白さがあり、活かしていく事ができた時の嬉しさが次への原動力になっています。

森 謙次

珊瑚はその生息域の違いにより、造礁珊瑚・宝石珊瑚・深海珊瑚と3つの名称で呼ばれています。

造礁珊瑚は、人が潜れる程(海底約1〜100m)の浅い海に生息している珊瑚で、ポリープと呼ばれる小さいイソギンチャクのような生き物の集合体です。
対して宝石珊瑚とは、海底400〜800mぐらいに生息している珊瑚です。
宝石珊瑚は造礁珊瑚に比べて硬く詰まっている上に色も赤、白と綺麗なので、宝飾や工芸に使われています。(造礁珊瑚はスカスカで、宝飾・工芸等には不向きです。)
さらに海底1200〜1800mぐらいに生息する珊瑚は、深海珊瑚と呼ばれています。

今回のweb展覧会では、森謙次さんに工房で珊瑚作品の制作風景をコマ撮り撮影した動画(タイムラプス)をいただきました。
参考までにご紹介します。

略歴

1974年生まれ(高知県)

1994
奈良芸術短期大学洋画科卒業
奈良一刀彫り工房"鐵山"入門
2000
家業の珊瑚職人になるため帰高
2005
海洋堂でフィギィア原型を制作する
2007
詩のボクシング高知大会優勝/全国大会出場

※2006年頃から、独学にて根付制作をはじめる

個展

2005・07・10
「森謙次彫刻展」 グラフィティ(高知)
2008
個展 坂本龍馬記念館(高知)
2009
「根付deポン!」ブックギャラリーポポタム(東京/池袋)
2009~11・14~18
Gallery花影抄(東京/根津)にて個展開催
2011・14~16
森謙次根付帯留展 沢田マンションギャラリーroom38(高知)
2014~15
森謙次帯留展omo(京都)
2017
「“河鍋暁斎と僕” 森謙次根付帯留展」GALLERY E(高知)

美術館

2009
「NO BORDER 4」高知県立美術館
2010
「一人快芸術」広島市現代美術館に出品
2012
「ART ZOO」藁工ミュージアム(高知)
「天翔ける鳥、旅する根付」城西大学水田美術館(埼玉)
2014
高円宮家所蔵 根付と宮中装束 呉市立美術館
2017
根付作家企画展示「森謙次」展 京都清宗根付館
2018
根付展 粋な装身具・江戸の工芸品 特別出品:高円宮家根付コレクション ひろしま美術館

グループ展

2009〜
各地のさまざまなイベント・グループ展に参加
西武百貨店、高島屋、三越、伊勢丹、ブックギャラリーポポタム、新宿眼科画廊、3ta2 gallery、ぎゃらりい秋華洞、Gallery花影抄、他
2009
「Young artist patoronage in japan」MONTBLANC 銀座店
2016
沢田マンションギャラリーメンバーによるグループ展 Verklighetenギャラリー(スウェーデン)
2018
第76回企画展「香美アートアニュアルvol.6 ものづくりの世界」香美市美術館
2019
元氣造物現場交流會(上海)

アートフェア

2011
「行商~ギャラリー・サーカス/Gallery花影抄ブース」青山スパイラル(東京)
「ULTRA004/Gallery花影抄/橋本達士ブース」青山スパイラル(東京)
2018
東美アートフェア ぎゃらりい秋華洞ブース(東京)
ART NAGOYA 2018/3ta2 gallery ブース(名古屋)
2019
Art Expo Malaysia 2019/Gallery Hanakageshoブース(Kuala Lumpur)
2020
KOGEI Art Fair Kanazawa 2020/3ta2 galleryブース(金沢)

メディア/書籍掲載

2007
NETSUKE AT THE MIAMI KAPPA CONVENTION 提物屋図録
2009
京都清宗根付館 木下宗昭コレクションⅡ(以後続刊)
2011
雑誌「宝石の四季」214号(珊瑚の特集内)
2012
学位論文 根付コレクションの研究 高円宮コレクションを中心に 大阪芸術大学 高円宮妃久子
2013
大阪芸術大学平成二十四年度講義録 博士号取得記念「根付」講義 高円宮妃久子(以後続刊)
2014
NHK・BSプレミアム「美の壺/猫づくし」にて作品「恵比寿猫」が紹介される
2015
NHK高知「情報いちばん」番組内で「高知で活動する根付師」として紹介される
2017
河鍋暁斎記念美術館のニュースNo363号にて紹介される
2019
高知県の情報誌「とさぶし」27号(宝石珊瑚特集)にて紹介される
2020
高知県の教科書「2020年度標準美術Ⅱ(中学校2年・3年)」に作品掲載

コレクション

  • 高円宮家根付コレクション
  • 京都清宗根付館
  • 増井光子コレクション(麻布大学収蔵)
  • スウェーデン/ウメオ市のパブリックコレクションとして作品収蔵