崇拝対象「燃焼」

Sūhai Taishō; Nenshō (Object of Workship; Burn)

題名
崇拝対象「燃焼」
大きさ
11.0 × 11.0 × 8.0 cm
素材
朴、アルミ
価格
93,500円(税込)
制作年
令和4(2022)年
管理番号
ktk23082902
備考
作家より
立体作品 崇拝対象 について
はじめに、これらの立体作品群は「宗教的な背景を持たずに祀られていると認識できる造形は可能なのか」という疑問から制作を開始した。
祀るという言葉の意味は「神としてあがめる、また、あがめて一定の場所に安置する」といったものでそもそも神霊の存在を信じていることが前提だが、日本における最も一般的に崇められている対象を思案したとき、やはり仏像が思い浮かんだ。
日本に存在する仏像の中には炎や後光の造形物を背負った像が多くあり、経典に記された逸話を根拠としてあたかも自然現象がその仏が持つ力かのような演出が成されている。
と、仏像の持つ神秘性に言及してきたが、単純に造形物として紐解いてみると、ヒト型を模した造形物+炎や雷から着想を得た造形を組み合わせるという形式で、要は不可思議な力を持ったヒトの似姿である。
古来存在する仏像から今日のアニメ文化におけるフィギュア造形でもその形式は受け継がれているが、それらは共通して宗教的もしくは架空の物語的な「背景」を持っており、その「背景」をもとに制作される偶像はそれまで言語や絵画であった情報、神秘性をより現実的に鑑賞者へ感じさせる機能を獲得している。
この 崇拝対象「〇〇」 シリーズは上記のような「背景」を一切持たず、形式に則り立体の構図と抽象化したヒト型、「〇〇」に入る現象を模した造形を組み合わせることによって 祀られているっぽい偶像 を表現した作品である。
まず、作品に対峙するとヒトのような造形物に炎や雷のような造形物がまとわりついてる様を確認し、その後作品タイトルを確認する。順序は逆でもよい。
そして「これは何かの神様や物語をモチーフにしているのか? 作者はこれらを崇めているのか? 宗教に関するテーマなのか?」というような疑問を想起させられれば、もうすでにこの作品の機能は完了したと言っていい。背景となる特別な物語は何もないがそれでも造形と短い言葉によって神秘性や奇妙さの入り口を認識させられれば成功である。
そういった奇妙さや不可解さに出会い認識しようと考えを巡らす状況に対して、その負荷から精神を守るために理由を求め納得しようとする心理メカニズムが信仰や崇拝、原始の宗教を成立させる糸口を生んできたのだろう。
科学でほとんどの事象に説明がつく現代において、それでも新たな崇拝や信仰が生まれることがあるとすれば、それは案外なんの背景を持たない 祀られているっぽい偶像 がきっかけになるのかもしれない。(カタクラ ケンタ)

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