Selection過去作品セレクション

永島信也は10年以上にわたる作家生活において、当初から美少女像とともに、 ファンタジー要素の強い神獣・霊獣・妖怪なども好んでモチーフとして取り入れてきました。 この度の個展でもその要素は色濃く出ており、これまでに制作した作品の中から、 永島自身が印象に残っているものを選び、解説してもらいました。

僕の制作の根本には、幻想に形を与えるという目的があります。 少女、神獣、妖怪。それら幻想を物体としてこの世に形作ることで 想像の中だけにいるものへ力を与えるのです。(永島信也)

因幡のシロウサ子

地元の出雲神話を現代風にアレンジしました。いつも思いますが、因幡の素兎のウサギって悪いやつですよね。ふつうに数えて渡ればよかったのに。サメもそりゃ怒るでしょう。僕はサメが好きですが、モチーフとしてはあまり扱いません。愛ゆえというわけではないのですが、作る対象ではないというところですかね。この作品は珍しくサメを彫っています。

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日輪の若凰

鳳凰は中国の神獣です。鳳がオス、凰がメスという説があり、若い少女という意味で若凰というタイトルにしました。フェニックスとの関連から火のイメージがあり、日輪と組み合わせています。鳳凰に関しては諸説あるのですが、その幅広い解釈は歴史の長さを現しているのではないでしょうか。この頃は手の造形を特に意識して頑張っていた時期です。その辺りも見ていただければと思います。

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龍の眼差し

僕の中で重要なモチーフである龍。その姿形から溢れ出る最強の風格。文句なしにかっこいい。東洋的な龍も西洋的な龍もどちらも好きです。人がこんな完璧なものを空想上の生き物として生み出したということ自体にも魅力を感じます。世界中で色々なデザインがある中、共通して「龍」と呼ばれるところも面白いですね。この作品は2018年の個展「龍の都」でのメイン作品で、渾身の一作です。

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真神

狼の神です。ニホンオオカミはその凶暴さから神格化されたと言われています。狼と聞くとタイリクオオカミの姿を連想する人が多いと思いますが、この作品のモチーフはニホンオオカミです。ニホンオオカミは結構犬っぽいです。狼の顔は作ろうとすると意外と難しいです。いくつかの作品で彫刻する中で、狼、狐、虎、猫なども、ちゃんと特徴を捉えることができるようになりました。狼の信仰といえば武蔵御嶽神社が有名ですが、まだ行ったことがなく、色々と落ち着いたら行きたいと思っています。

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きつねの魂

狐はお稲荷様の神使としての姿と、妖怪的な姿があります。稲荷神社も独特の怪しい雰囲気があったりして、総じて化かすものとしての心象が強いように思えます。この作品は、「〜の魂」という連作の一作で、何か怪しい不思議な存在として作りました。全国的に稲荷神社はかなりの数存在しています。お狐様は僕の好きな神様で、神社巡りをする中での楽しみの一つとなっています。

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妖怪少女 鵺

猿の顔、狸の胴、虎の手足で尾は蛇になっている。こういう伝承は、何か不思議なものを見たときに誰もが知っているものに例えて、それが口伝されていったというのが成り立ちだと考えています。空想の生物を創造する際はそれと似たように、いわゆるキメラ的存在を構成することが一つの手段としてあるわけですが、僕はその中に少女という要素を加えている訳です。これは作家を始めたころから行なっている手法で、好きなものと好きなものを混ぜたら素敵なものができるだろう、という考えなのです。

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妖怪少女 鎌鼬

かまいたちは「構え太刀」が訛ったものとの説がありますが、伝承の多くはその言葉の発音によって変化したり意味を持ったりしており、口伝によって形作られていたのだろうなという想像ができます。しかしもともとの構え太刀というのも、何か妙な言い回しに感じますし、太刀がイタチになってそのまま姿として、描かれるようになった経緯に想いを馳せるのも、なんだか面白いものです。

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妖怪少女 人魚

人魚は完成されたモチーフといえます。好きなものと好きなものを混ぜる、という意味では僕の中では理想的な姿とも言えるでしょう。初めて作った女性モチーフの根付も人魚でした。度々扱う個人的には鉄板のテーマではあるのですが、魚の種類を変えてみたり色々な構造的解釈も織り交ぜたりと、変化と進化も心がけています。

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