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【永島信也作品に寄せて】

子どものころからポケットモンスターに親しんで育ってきたという方々はたくさんいて、永島もそのひとりです。
ポケットモンスターは、超常的な力を持つ不思議で魅力的なキャラクターで、子どもから大人までが想いを寄せるファンタジーの世界の住人たちです。
一方で、昔から私たちの住む世界にあって人々の信仰を集める神様の使いの動物たち、狐や狼や兎などに寄せる人の想いも同じようなものだったのではないかと思います(現代のキャラクター文化自体が、古来からの日本文化の上に繁茂しているのだと考えられます)。
永島信也が制作する根付や彫刻の数々は、まさにそのような環境で生まれた作品たちです。今、作家自身が思いを寄せる対象であり、またファンタジーに想いを馳せる人々の気持ちを受け止める存在です。姿形がかわいらしく、愛でる対象でありながら、憧れや、時には畏れを抱く対象でもあり、傍らにあって助力をくれたり、戒めを与えてくれる存在でもある。
永島信也の作品が、そのようなモノとして、世の中に存在してほしいと願っています。
(Gallery花影抄/橋本達士)

【個展タイトル「からの依代」について】

今回の個展(現在)に至るまで、僕は自分が何を作りたいのかを探し続けてきました。もともと、「作るという行為」自体が自分の中では重要だったので、女性像という一つの軸があれば十分で、それを中心にいろいろなアプローチをしていくことが制作スタイルとなっていました。しかし、もう一歩先の、自分の芯となるものへの渇望は心の中にずっと潜み続けており、その問題への挑戦が近年の課題になっていたように思います。
2019年から2020年にかけて、小さいですがいろいろなきっかけとなる出来事が起こりました。内容は本当に何気ないことなのですが、そういったものを経て、考えることによって一つの答えは見えてきました。自分が何を作りたいのかではなく、自分が何を作ってきたのかを分析しました。僕が作ってきたものは御守りであり、その人がその人自身の祈りや想いを込めて、飾るなり、身につけるなりする依代だったのだ、と改めて実感したのです。
「から」とは空であり殻です。容れ物としての依代があり、そこを満たすのはその所有者なのです。言葉にしてみれば最初からそうだったでしょうという話ではあります。根付は縁起担ぎとして御守りの要素は強いですし、ドールなどのようないわゆる“人形”もそういう側面を持っているモノです。
そんなこんなで結局のところ何も変わってないじゃないかという話にもなりそうですが、それを自覚することこそが自分にとっての大きな一歩でした。

今回扱ったモチーフはどれも何か願いや思いを受け入れる余白を持つもの達です。
例えば神獣や神使のように動物の中にはそのモチーフが持つ神秘性から神格化されたものがいくつかありますが、狐・兎・蛇・狼など、その題材がもつ力やご利益なども意識してご覧いただければ面白いかと思います。

そんな僕の新たな一歩である「からの依代」たちをお楽しみくださいませ。

永島信也

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