齋藤美洲根付彫刻新作展

2018年2月10日[土]~18日[日]
※13日[火]休廊
13:00~19:00(最終日〜18:00)



齋藤美洲は東京の下町で江戸時代から続く象牙彫刻の家に生まれ、四代目として職人の世界を間近にしながら、
同時に上野の西洋美術館や東京国立博物館などの空気を吸って育ちました。この環境が作家独自の作品世界の源となっています。
1970 年代に始まった、新しい芸術的な根付を創りだそうとする「現代根付運動」の中でも、
中心的な作家として斬新な現代根付作品を発表してきた作家の一人です。
現在も独自の世界観の可能性を模索しながら日々制作に励んでいます。
今回の個展では、以前より取り組んでいるセイウチの牙の化石を中心に再び素材として取り上げ展開していきます。
時代を超え、素材が再び命を吹き込まれる仕事に注目いただければ幸いです。
展示では新作が十数点並びます。

[作家の言葉] 齋藤美洲
セイウチ牙は、象牙、鹿角に比べ硬度が高いが、同様に彫刻することは可能である。
この素材の特長は、象牙の如く均一でなく、断面を見れば解るが三層からなる。
外皮(磨いても、内側部分の様な艶が出ない)、内側部(無地)、中心部(泡、粟状の組織)に分
かれ、それぞれの素材の性質は異なる。
化石素材も同様であるが、加えて硬度がより高くなる。化石は、セイウチ牙が万年単位で地面下に埋もれ、
土の成分やバクテリア等で化学変化して、外皮から徐々に色が付いたものと推測される。
よって小片は内部まで変色し、大きな牙は表面のみの場合が多い。

化石を彫刻する時には、他の素材に比べ倍の硬度と思われる硬さ、粘り気がなく、
線彫りなどのテクニックを見せることの出来ない性質、化石の持つ独特な色を、ひび割れを、
茶道における景色として生かすような発想が三要素として考慮すべきところだ。

興味を覚えることに、マンモスの生息した時代であるゆえに、人類も生存し、
骨器も出土され、それに手を加えるのは、古代ロマンを想起させてくれる。