藤井安剛 根付展

2008年9月20日(土)ー9月28日(日)

ご挨拶

 このたび、ギャラリー花影抄では、根付師 藤井安剛の初個展を開催させて頂く運びとなりました。数年に渡り企画を温め、開催を切望していた展覧会です。制作に時間のかかる根付で、個展を開催するのは、作家にとっても大変なことです。今回、満を持しての個展開催となりました。
 安剛の根付の魅力は、いぶし銀のような渋い世界観にあります。古い将棋の駒を集める事が趣味で、様々な骨董市などを巡っていく中で、古い品々の持つ奥深い世界に触れ、自身の「価値観・眼」を持つようになっていったのだろうと思います。その「眼」をもって作り出す根付の数々には、やはり、彼独特の世界が展開しています。どんなささやかな作品であっても、確かに安剛らしさが、そこに宿っていると感じられます。紐穴の処理など見ると、根付に対する作家の愛情が伝わってくるのです。「現代根付」と呼ばれるジャンルでは、様々な価値観がせめぎあっていますが、「根付」が「根付」であることの素晴らしさが、安剛作品にはあると思います。
 今回の展覧会には、現代では、手掛ける者の少なくなった「饅頭根付」や「差し根付」などをはじめ、もちろん形彫り根付もあり、総数14点が並びます。皆様の御来場を心よりお待ち申し上げております。

作家の言葉

 花影抄に於いて、初めての個展を開催いたします。
 私は幕末から明治期の提物が好きで、根付・煙管筒・煙草入・とんこつ・矢立て等、そのキラキラした工芸世界にあこがれを感じています。それらの中でかろうじて生き残っている根付工芸の世界にあこがれを感じています。今回の展示では、象牙・鹿角・黄楊・ママホガニーと四種の素材を使っています。題材に対する素材の選び方も見てほしいところですが、どの作品でも、その小さな世界にキラキラのほんのひとかけらでもいいから、たとえ一瞬でも輝いてくれれば、と願っています。