佐野藍彫刻展 -INNOCENT-

2017.2.25(土)~3.5(日)
※27(月)休廊



 大理石を用いてドラゴンや幻獣、動物などを表現する彫刻家の初個展です。

 石彫は、彫刻で用いる素材の中でも硬く重く手強い素材なのではないかと思います。しかし熱っぽい佐野さんの話しを聞いていると、逆にその強固さは作品を半永久的なものとしてこの世に生み出すことができる長所となり、時間を超越する、時の流れに思いを馳せられる、そういう魅力として膨れ上がって作品に結実するのだと、それこそが石彫の魅力なのだと、そのような事にあらためて気づかされる、思いが至るのです。

 佐野さんは、自分の頭の中、心の中に持つファンタジーの世界を現実の世界に生み出したいという想いを幼い頃から持ち続けてきたと言います。本来はカタチや重さを持たないイメージの世界の住人たちを強固なものとして現実の世界に存在させるには、今のところ、彼女にとってこの大理石という素材が最良のものであるでしょう。
 幼い頃から抱いてきた夢や願いの込もった石彫・平面を合わせて、5~7作品ほど展示します。

 最初に佐野さんの作品を観たのは、大学4年生の卒業制作展の会場でした。白く美しい巨大な幻獣の彫刻作品に魅了されました。
 私どものギャラリーは普段、牙彫(象牙や鹿角など)作品を扱うことが多いのですが、大理石の彫刻にも共通の「理」を感じ新鮮な印象として記憶に残りました。その後、御縁を頂き、こうして初個展を開催させて頂けることに喜びを感じております。
 是非、多くの方に御高覧頂き、彫刻家・佐野藍の世界観に満ちた空間をお楽しみ頂きたく願っております。


Gallery花影抄/橋本達士

作家の言葉

「初個展によせて」  

幼い頃、、公園で遊んでいると、生垣の葉が揺れているのを見つけた。持っていた木の枝でその葉をかき分けると、暗がりの奥に青く光る鱗を持った小さな恐竜がいた。
興奮しながら家に帰って母に話すと、「それは、トカゲと言うんだよ」と教えてくれた。私とトカゲとの初めての出会いだった。家族を初めて認識した日、イヌやネコを初めて見た日は、もう覚えていないが、トカゲとの初めての出会いだけは、なぜか鮮明に覚えている。しかも思い出すだけでその時の言いようのないワクワク感が今でも蘇る。私にとって、かけがえのない記憶だ。

それから、わたしはアニメやおとぎ話の中に出てくるドラゴンという存在を知った。
色々な場面で色々な姿立場で出てくる彼らとの出会いには、トカゲとの出会いに似た楽しさがあった。

それから時が経ち、彫刻と出会い、芸大に入った。アカデミックな世界を前に、途端に自分の中に居るドラゴンの存在が恥ずかしくなった。そんな中、わたしのドラゴンの絵を見た先生が言った。
「この絵、石で彫刻にできるよ」
私は大理石と出会い、石彫を学び、卒業制作やその後の作品によってご縁ができ、そうして今ここで作品を発表している。

初個展を開催するにあたり、どのようなテーマで展示をするか、とても悩んだが、そんな時に目を瞑ると見えてくるのは暗がりに浮かぶ、青く光る鱗…。
あの時のような気持ちを、大切にしたいと思い、節目となる初個展に、わたしの大切なものたちをテーマとした展示に致しました。

最後に、私はたくさんの方に支えて頂いて制作をしています。
学生の頃から、そして卒業してからも彫刻の仕事をさせて頂いている職場 D.B.Factory の大森暁生さん、同僚や、取引先の方々。話を聞いてくれる家族や友達。石の扱いを教えてくれた東京藝術大学准教授 原真一先生、彫刻科教授深井隆先生、諸先輩方。今回のギャラリーへの御縁を結んで下さったコレクターのI様、そして企画を組んで下さったGallery花影抄の橋本達士さん、木塚多賀子さん、皆様。
言い出したらきりがないですが、皆様のおかげで、常に彫刻することに携わる日々を送っております。この場を借りて、御礼申し上げます。


2017年2月 佐野藍