泉水 陶根付展「江戸千部振舞」

2019年7月6日[土]~14日[日 ※8日[月休廊

13:00~19:00、最終日は18時まで



この度、Gallery花影抄では泉水の陶根付展を開催いたします。
この数年の泉水の作品展開において、後ろから支えていたものは「本」であったと言っても良いように思います。

主には江戸時代の内容ですが、本や資料を集めてページをめくり、自分の頭と心に点滴のように染み込ませていき、吸収して作品を制作してきました。本とは文化が物質化したようなものです。知らない本、知らなかった文化に触れて驚いたり感動したり、考え込んだりすることが、作品の生き生きとした表現にも現れているように思います。今回の個展は、その「本の文化」そのものをテーマに選んでいます。

もともと、大学でフランス文学を勉強していた泉水が、どのように江戸の出版文化に反応するのか、是非、ご期待いただきたいと思います。

陶の根付20点あまりを展示いたします。


作家のことば 泉水

「千部振舞」とは江戸時代のベストセラー本。
1000部売れると大ヒット。版元、本屋は総出で氏神様へお礼参りに行ったといいます。

江戸前期、上方を中心に木版印刷が普及し商業出版が始まると、本は庶民に身近な存在となります。元禄期、大坂で井原西鶴の「好色一代男」の大ヒットにより出版業界は大いに盛り上がり、江戸においても出版業者、本屋が急増しました。とはいえ、木版刷り、手作業製本の書物は高価でしたので庶民はもっぱら貸本を借りて読んでいました。
内容は娯楽小説、ハウツー本、ガイドブック、教育書と多岐に渡りました。
江戸後期、江戸の貸本屋は600軒を越えていたと言われます。メディアの少ない時代に書物の持つ影響力は相当なものだったと想像します。
度々の幕府からの発禁処分にめげず庶民は貸本屋から読みたい「噂の本」を借りて読み、楽しんでいたのでしょう。

昨今は電子書籍の普及、読書人口の減少などで「本」の在り方も変わりつつある様ですが、江戸の人々が楽しんだ小説を令和の私達が読める幸せは、当時の「本」を大切に大切に繋いでくれた歴代の「本屋さん」からの贈り物です。
今回の展覧会はそういった方々へのオマージュでもあります。

さて、「江戸千部振舞」では、どんな本が当時の「千部振舞」だったのか、見立てでご紹介いたします。