井天の青を想ふ 紫苑 根付彫刻展

2009年3月14日(土)ー3月22日(日)

■このたび、ギャラリー花影抄では、伊勢在住の根付作家 紫苑(シオン)による初個展を開催させて頂く運びとなりました。紫苑は、主に伊勢で採れる良質の黄楊を使った木彫根付を制作している作家です。昔からの根付の伝統の続く土地で、次世代を担うであろう有望な若手作家のひとりと考えています。植物や小動物の題材を主に手がけていますが、特に木の実などの静物に対する感覚に、秀でたものを感じます。「裏庭で実った木瓜の実に蟻が巣を作っていた」というような、日常の中にある、身の周りのささやかな自然の営みに多くを感じているようです。彼の作る木の実などの根付を眺めていると、静物画を見ているような気分になることがあります。繊細で丁寧な仕事ぶりにとても好感がもてます。
 また、スタイルとしては「古典根付」に学んで根付を制作していくタイプの根付作家と言えます、
今回の展覧会でも、伊勢の伝統的な根付や、藻スクールのスタイルに添ったものをいくつか発表しています。基本を学んだ後、どのように自分の道を見いだしていくのか?その先も楽しみな作家です。

 身近な動植物を題材にした新作根付を中心に、二十数点が並びます。

■作家の言葉

今回は、花影抄のご厚意により、幸運にもこの様な作品展を開かせていただけることとなり、とてもありがたく思います。
思えば十年ぐらい前に宝飾関係の本に載っていた根付を見て、初めて根付というものを知りました。元々、小さな物が好きで宝飾加工の仕事に就きましたが、自分のものというのは作れずに満たされぬ思いが募っていた時期でもあったので、すぐに根付に魅かれましたが、当時、伊勢には根付に関する本など、別冊太陽ぐらいしか手に入りませんでした。もちろん伊勢根付も現代根付も知りませんでした。
根付を知っても自分で作れるなどと思いもしませんでしたが、ある時、たまたま見た伊勢木彫会の作品展で根付が何点も展示されているのを観て、傍に居た森本先生に話を聞くと中川先生のことを教えていただき、中川先生の工房を訪ね、教えを受ける機会を得て今にいたります。
初めは、ただヤマネなどの小動物を彫りたいだけで、このような作家活動が出来るとは思いませんでしたが、このように花影抄に作品を置かせていただける機会を得たので、今後も拙いなりに自分が出来る出来る精一杯の作品を作っていきますので、どうか宜しくお願いいたします。
僕の作る根付は、ほかの作家の方のようなインパクトはないと思いますが、一つでも手に取り、楽しんで観て下されば幸いです。